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電子回路の工作
センサーモジュールを使いこなすためには、電子工作が必須です。そのために必要な半田付け作業について紹介します。次に、センサやアクチュエーターなどとの接続について必要となる、インターフェイス(I/O)にの作成についても紹介します。
(1)半田付け作業
作業自体は、インタネットで検索すると数多く紹介されていますので、そちらも検索して参考にされるのが良いでしょう。
基本的には「半田ごて」を通電して温度を上げ、「半田」と呼ぶ材料を溶かして部品どうしの電気的接続と共に機械的に保持する役割を持ちます。
電子回路の組み立てでは、通常は「プリント基板」と呼ばれる「絶縁版に銅箔で配線パターンを描いたもの」に部品を搭載し、銅箔との接合を半田付け作業にて行います。そのほか、電線どうしの接続や端子板への配線、部品搭載などでも幅広く使われています。
・はんだ付けに必要な基本的なツール
はんだごて
はんだごてスタンド(こて先クリーナー付き)
はんだ
はんだ吸い取り線
耐熱マット
・作業手順
はんだごてに電源を接続し、はんだ付けに適した半田の溶融温度まで上げる。
プリント基板に部品を配置する。
プリント基板の銅箔と、部品のリードに半田ごてを当てて温度を上げる。
温度を上げた接合部に「半田」を供給し、溶融させる。
銅箔と部品リードに半田がなじみ、綺麗なフィレット(富士山の裾野の形状)ができたら半田ごてを離し冷却する。
目視にて十分に電気的接合、機械的接合ができているかを確認する。場合によっては通電試験を行う。
半田が意図しない端子に流れて短絡した場合などは、はんだ吸い取り線を使用して余分なはんだを除去する。
連続してはんだ付け作業を行う場合、適宜半田ごてのこて先をクリーナーで清掃して作業を行う。
・注意点
半田ごてのヒーター部や、半田付けの際の接合部は高温になるので火傷に注意する。
半田付けを行う対象物は耐熱マットなどに載せてはんだ付け作業を行うなど、熱に配慮して作業を行う。
火災予防のため、半田付け作業が終了したら確実に半田ごての電源を切り、所定の半田ごて置き場に収納する。
(2)インターフェイスの作成
マイコンなどの制御機器と外部の機器(センサやアクチュエーター)との接続部インターフェイス(I/O)の作成につて説明します。
①アナログ出力のセンサー信号をマイコンのアナログ入力ポートに取り込む場合
マイコンのアナログ入力ポート(ADC)の入力範囲になるよう、抵抗分圧回路などを挿入します。
2抵抗分圧回路
ここで、ADCには以下の式であらわされるVoutが入力され以下の式であらわされるようにR1とR2の比で決まります。
Vout =R2/(R1+R2) × Vin
理想的にはR1とR2の比だけで決まるのですが、実回路では周辺の回路を影響を受けますので、数キロΩから数10キロオームの抵抗を使うことをお勧めします。
②マイコンのデジタル出力を使って外部機器を駆動する場合
デジタル信号の2値、1と0は、電気信号ではHi/Lowとしてあらわされ、マイコンのインターフェイス(I/O)では、VDD/GND(例えば、5V/0V)のそれぞれのレベルで出力されます。
上述のI/Oに対して、オープンコレクタ(オープンドレイン)回路や制御機器で言うところのNPN出力では、抵抗値が無限大(∞)/零(0)の2値としてあらわされます。従って、抵抗値が零の場合に該当の端子へ外部から電流を引き込むことができます。
オープンコレクタ回路
また、NPNに対してPNPタイプもあります。PNP出力は電圧(DC24Vの場合が多い)出力される/出力されない(抵抗値は∞)、の2値になります。電圧出力される場合には、外部で電流を引き出すことができますが、電圧が出力されない場合での電流を引き込むことはできません。
このように、マイコンのI/Oと制御機器のNPN, PNPでは使用方法が異なりますので、十分注意してください。
LEDの点灯等、小電力の場合マイコンのデジタルI/Oを直接使って接続したデバイスを直接駆動できる場合もありますが、多くの場合は接続回路を介して接続します。
マイコンの端子のドライブ能力(電圧、電流、電力)を超えないよう、かつ、制御される側(センサ、アクチュエータ等)が十分に動作できるように、I/O回路を設計してください。出力がHigh(5V)の場合、端子から流れ出す電流が端子の最大電流を超えないように、かつ、出力がLow(0V)の場合、端子に流れ込む電流が端子の最大電流を超えないように、接続する回路を設計します。
・LEDを直接駆動
マイコンのデジタル出力端子にをLEDを接続して出力(Vout)がHiレベル(例えば3.3V)の際にLEDが点灯する回路を作ります。
LED点灯回路
Vout(IOport) = Vr + Vf
Vr = IR
ここで、
Vr:抵抗の両端の電圧
Vf:LEDの順方向電圧
I:回路に流れる電流
R:回路に直列に入れる抵抗
LED点灯に必要な電流を20mA(=I)、LEDの順方向電圧を1.3V(=Vf)
とすると、
3.3[V] = 20[mA] × R + 1.3[V]
ここから、回路に挿入する抵抗は
R=100[Ω]
となります。
※マイコン端子から流せる電流Iが20mA以上あることが前提です。
・トランジスタ n-ch MOS FET( n-channel metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)を使った接続回路で大電力系の駆動
モーターを回転させる等の電力を必要とする場合は、十分なドライブ能力(電力)を得るためにトランジスタを介して、マイコンとデバイスを接続します。
回路図と写真
上記の回路を、オープンドレインと言い、ON/OFFスイッチ回路です。マイコンのデジタルI/Oとトランジスタ(n-ch MOS FET)のゲート(G)端子、それぞれのGNDどうしを接続します。
マイコンのI/OからHiレベル(例えば、5V)を印加するとトランジスタのソース(S)-ドレイン(D)間の抵抗が小さくなり、回路に電流が流れ、デバイスを駆動することができまます(スイッチON)。Lowレベルならば、トランジスタがOFFになります。
トランジスタのゲート(G)は、抵抗(R=50kΩ程度)でGNDに接続します。この抵抗が無いと、トランジスタのゲートが不安定になり誤動作の原因になります。特にマイコンのI/O線を外した場合が要注意です。
コントロールするデバイス側の電圧が高い場合には、後述するフォトカプラを用いて回路を電気的に完全に分離した後、本回路で電力をドライブします。
・フォトカプラを使って高電圧系の駆動
DCモーター等の高電圧のデバイスと接続する際には、フォトカプラを使って、制御用のマイコン(一次側)とデバイス(2次側)を電気的に完全に分離します。一次側、二次側それぞれのグランドラインも分離します。
回路図
・回路設計ツール SPICE
電子回路設計の便利なツールとして、SPICE (Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis, スパイス)が有ります。下記のリンクから、アナログデバイス社のLTspiceがダウンロード可能のです。
https://www.analog.com/jp/design-center/design-tools-and-calculators/ltspice-simulator.html
(3)専用プリント基板の設計と製作
上記(1)で紹介した程度の部品数ならばユニバーサル基板を使って簡単に制作することが可能ですが、部品点数が多い場合には専用基板を作成することをお勧めします。
専用プリント基板を設計するには、まず基板CADを使用して、部品の登録・回路図の作成・配線パターンの作成の順に設計データを作成していきます。基板CADにはいろいろな種類がありますが、今回のセンサーモジュールの設計では実験室で3D CADとしても使用しているFusion360の電子回路モジュールを使用しました。
ライブラリマネジャーで、使用する電子部品のCADデータを登録します。
ここに登録するCADデータは電子部品のメーカーや各種CADデータを集めているサービスからダウンロードできますが、自分で作成する事もできます。
登録した部品のピンを接続して回路図を作成します。
回路図に基づいて、プリント基板の配線パターンを作成します。
このようにして作成したプリント基板のデータを出力して、外部の基板製造サービスに製造を依頼します。
外部の基板サービスで製造したプリント基板(部品実装前の「生基板」)が送られてきましたので、部品の実装にかかります。
生基板に部品を載せて、電気的に接続と機械的に固定をするために半田付けをする必要があります。今回は「クリーム半田」を接合部分に塗布して「リフロー炉」で半田の温度を溶融点に上げて接合する方法を取ります。
まず、接合部だけにクリームはんだを塗布するために「メタルマスク」を使用します。このメタルマスクと生基板の位置を合わせるための治具を3Dプリンターで作成しています。
これが今回のセンサモジュール基板に合わせて用意したメタルマスクです。
薄い金属板に、接合部の位置に合わせた穴が開けられています。
生基板の上に正確にメタルマスクを配置してクリーム半田を塗布すると、生基板の接続パッド上にクリーム半田の層が作られます。
顕微鏡で確認すると、小さなパッド上に上手くクリーム半田の層ができているのが分かります。
この上に電子部品を載せて、「リフロー炉」に入れて半田の溶融温度まで上げていきます。
リフロー炉には温度変化をどのように与えるかの温度プロファイルが設定できますので、使用する材料に合わせた温度プロファイルを選択します。
この写真では、リフローが終了して部品が正常に搭載されたのを確認することができます。
このようにして、すべての部品を搭載したものが以下の写真です。